筑波大学教授の徳田克己先生が、ママの子育てに関する悩みに答えてくれるコーナー。

3歳の息子は、何をやるにも不器用で失敗ばかり。ハサミやのりの使い方を家で教えても、園ではうまくいきません。そんな様子を見ているとイライラして、つい叱ってしまうんです。
子どもは失敗をして、次はどうすればいいかと頭を働かせ、学んでいきます。たまたまうまくいったことからは、何も学ぶことができません。失敗する子どもほど伸びていきますよ。

 

幼児期に必要なのは 成功体験よりも失敗体験

 

お母さんはわが子の失敗を見たくないがために、子どもに前もってあれこれ教えようとします。

 

また、「うまくいくのが良いこと」だと思って、子どもが失敗したときに「どうしてママの言った通りにしないの!」などと叱りつけていませんか?そんな風に頭ごなしに叱られると、子どもはそれが嫌でチャレンジをしなくなってしまいます。

 

幼児期の子どもに本当に必要なのは、上手にできた成功体験ではなく、失敗した体験です。初めてのチャレンジは、むしろ「失敗するためにやる」と言ってもいいでしょう。

 

人は失敗すると、同じ失敗を繰り返さないように、次は工夫をします。この工夫こそが「考える」ということです。トライ&エラーを繰り返し、自ら考え、工夫を重ねていくからこそ、人は成長していくことができるのです。

 

うまくいく方法を親がいつも先に教えていたら、子どもは自分で何も考えなくなり、成長する機会を失ってしまいますよ。

 

失敗することで、子どもは 「耐える力」も身につけます

 

園では、先生たちが子どもたちに上手に失敗をさせてくれます。「どうして失敗をしたのかな?」「次どうしたらうまくいくかな?」と子どもに考えさせて、チャレンジさせてくれるのです。

 

でも、子どもはまた別の原因で失敗します。先生はそのたびに、子どもに考えさせます。こうして子どもは、たくさんの失敗体験をもとに、どんどん伸びていくことができるのです。

 

また、失敗することで、子どもは耐える力も身につけます。そのためにも、子どものうちから、自分の失敗には自分で責任を持つようにさせなければなりません。

 

自分がこぼした牛乳は自分で拭きます。かけっこで転んだら、泣きながらでも自分で起き上がってまた走ります。失敗は、誰にとっても辛くて痛くて、恥ずかしいことだけれど、それでも自分で耐えなくてはいけないことなのです。

 

親や先生が代わりに牛乳を拭いてあげたり、手を引いて走ってあげたりしたのでは、子どもに耐える力が身につく、せっかくのチャンスを逃してしまいます。

 

親が手を差し出したくなる気持ちはわかりますが、そこをこらえて。失敗を繰り返すことで、心が強く、失敗してもくじけず 、前を向いていられる子どもに育っていきますよ。

 

 

 

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筑波大学 医学医療系教授
教育学博士 臨床心理士
徳田 克己先生
子どもたちが笑顔で生き生きと過ごせることをめざし、研究・実践に取り組む。幼稚園や保育所、子育て支援施設を回り、発達相談に応じている。最近はディズニー映像の教育的効果や「クレヨンしんちゃん」の分析などの実践研究を手がけている。保護者を対象にした講演会や「お父さん講座」なども好評。