立命館小学校

地球のために私たちができること

レジ袋が有料化される一方で、コロナ禍で店頭商品は何もかもがプラケースや袋入りで売られるようになりました。私たちの生活の中で、プラスチックはますます増えています。そんな毎日に疑問をもった立命館小学校の児童のみなさん。小さくても自分たちでできることを、とエコ活動を始めた6年生女子児童の3人にお話を聞きました。

活動に取り組む児童たちとそれをサポートする 立命館小学校 教諭
小曽根巌先生 と 三ツ木由佳先生

授業イラスト

映画「マイクロプラスチック・
ストーリー」の衝撃

5年生の時の冬休みの宿題で、アメリカの映画「マイクロプラスチック・ストーリー 〜ぼくらが作る2050年」を見る、というのがありました。その映画は、私たちと同じ年の、ニューヨークの小学生の取り組みを追ったドキュメンタリーでした。

プラスチック容器や袋があちこちに捨てられて、川や海の中に流されて、ボロボロになっていくんです。どんどん細かくなって、目に見えないほどの小さな粒になって……それがマイクロプラスチックです。マイクロプラスチックは、たとえば小さな魚が知らずに食べて体内に入ります。食物連鎖で、その魚を食べるもっと大きな魚、そしていずれは大きな魚を獲って食べる人間の体の中に入っていきます。

マイクロプラスチック……普段の生活で当たり前のように使って捨てているプラスチックがそんなふうになるのも驚きましたが、その事実を知った小学生がアクションを起こしたことに感動しました。川や海辺でゴミを拾い集めて、何が落ちているのか調査活動を始め、データをまとめて市議会に提案するなど、大きく行動していくんです。本当にすごいなあと思いました。

授業写真

私たちにできることは
なんだろう?

私たち3人は、何も申し合わせたりすることなく、「マイクロプラスチック・ストーリー」を観たあと、それぞれゴミ拾いに出かけてるんです。家の近くの道端とか、遊びに行った親戚の家とかキャンプ場のそばの川や海に。落ちているゴミを意識して道や川辺を歩いたのは初めてでした。そして、ゴミの多さに驚きました。空き缶とか、いろいろなゴミがあったけどやはり多いのがプラスチック容器や袋でした。映画の舞台はニューヨークでしたが、日本も同じだと思いました。

冬休みが終わって、拾ったプラスチックのゴミを先生に見せに行きました。そこで初めて私たち3人はお互いに、映画に感動してゴミ拾いをしていたことを知ったんです。そして、先生に勧められて、プラスチックのゴミを減らすためにできることはないか、3人で話し合ってみようということになりました。

今は週に1回放課後に集まって話し合ったり作業をしたりしています。それ以外の日は、グループチャットで随時やりとりをしています。

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プラスチック・ゼロ給食!

一学期に取り組んだことは、給食に出てくる牛乳パックについている「ストローを使わない」活動です。パックからストローとストローの入っている袋を外し、未使用のまま回収します。牛乳は、各自持参の水筒のコップを使って、パックから注いで飲むようにしています。回収したストローと袋は、ポスターなど作品制作の材料として生かす予定です。

ただし、これは強制ではありません。ストローで飲みたいと思う人は使ってもらっていいんです。私たちの呼びかけに賛同して協力してくれたのは6年生の75%でした。

5年生以下にも広げていきたいけれど、1、2年生にはちょっと難しいかもしれないし、負担なく簡単に取り組めるようなことを、もっと提案していけたらと思います。「マイクロプラスチック・ストーリー」の中で小学生たちは、校内のカフェテリアでのプラスチックゴミが多かったことから「プラスチック・ゼロ昼食」をめざすんです。私たちも「プラスチック・ゼロ給食」をめざしています!

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取り組みレポート:自ら関心をもち考えて行動する子どもたちを見守り育む土壌

映画鑑賞をきっかけに
プレゼンコンクールも視野に

「『マイクロプラスチック・ストーリー』の日本語吹き替え版には、立命館小学校の卒業生が声優として参加してるんですよ」と、三ツ木先生。現在中学生のその卒業生もこの映画を観て感動し、吹き替え版の声優オーディションに応募したのだそうです。そうした積極的な先輩の行動も、今回の6年生3人の「背中を押していると思います」(三ツ木先生)。「よく笑うし、ふわふわして見えますが」と笑いながらおっしゃるのは小曽根先生。牛乳パックのストロー回収は「無理なく取り組める地に足着いた活動を、と熟慮した結果生まれたもの」(小曽根先生)だそうです。あくまで自分たちでできることを自分たちで考えて計画することが重要とのことで、「われわれ教員は必要なアドバイスはしますが、見守りに徹します」(両先生)。
3人はエコ活動の成果をプレゼンテーションする動画コンクールへの応募を計画しており、その準備にも余念がありません。

5年生以下にも
引き継いでいけるように

映画への声優参加の例もあるように、先輩の具体的な活躍はとても励みになります。現在も3人は、立命館大学でエコ活動を行う学生との意見・情報交換を行っているそうです。先輩たちから受けたものを自分のものにして伝え、5年生、あとに続くみんなに引き継いでもらえたら……。そんな思いを胸に秘めて3人は活動しています。この活動がもっともっと多くの人を巻き込み、大きな力になると信じて。

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※本内容は子育てフリーマガジン「クルールきょうと版2022年9・10月号」に掲載された内容です。教員情報および取材内容は掲載当時のものです。