立命館小学校

自分の意見を言える子に

手を挙げ、先生に当てられたら立って教科書を音読する―国語の授業ではよくあるそんな風景とは、大きく違います。登場人物になりきって情感を込めて読む―というより演じる。そんな手法を授業に取り入れている立命館小学校の5年生、国語の教室におじゃましました。

立命館小学校 教諭
吉永かおり先生
5年生の国語科を受け持つ吉永先生。「5年生にもなると発言がしっかりしてきます。キラリと鋭い言葉もあって、ええこと言うやん!と、教わることも多いですよ」と笑います。

授業イラスト

「演劇的手法」が
もたらすものとは?

谷川俊太郎さんの詩「さようなら」を題材に演じる俳優。

谷川俊太郎さんの詩
「さようなら」を題材に演じる俳優。

物語や詩歌を読む面白さは、「何が書かれていないか」を探ることだと思っています。文章を読むときに「書かれてあること」だけを読むと作品の解釈は深まりません。作者が書こうと思って書かなかったことや、書きたかったけれど書き得なかったこと、それらを考えたり話し合ったりすることで作品の世界は広がったり深まったりするのです。そのために「演劇的手法」を取り入れています。例えば新美南吉の『ごんぎつね』の最後の場面で兵十は近づいて「ごんを、ドンと、うちました。」が、いったい二人はどのくらいの距離だったのか。「火縄銃をばたりと、とり落としました。」けど、とり落とすってどんなふうに落とすことなのか。そこまでは書かれていない。作家が書かずにおいたもの、あるいは書き得なかったことを見つけるためには、なってみるのがいいのです。ごんを撃った兵十はどんな足取りで倒れたごんに駆け寄ったか。自分で表現してみることでより深く、より自由に、物語の世界を感じ、味わうことにつながります。協働学習を行うと、役者さんや友達の読み方、感じ方を目の当たりにします。自分とは違う捉え方がたくさんあると知るのは楽しいことです。楽しいと、もっと学びたくなりますよね。

「どんな気持ちなんだろう?」読み取った詩の世界観を俳優と一緒に演じます。

「どんな気持ちなんだろう?」
読み取った詩の世界観を俳優と一緒に演じます。

立体的な
「読む」「書く」「話す・聞く」
ディベートや俳句づくりも

ディベートの授業も取り入れています。好きな子は水を得た魚のように生き生きと発言しますし、発言には苦手意識のある子も、友達がどんなふうに意見を述べるのかを注視しますので、それぞれに学びがあります。以前先生方も交えて、「RITS共和国のお菓子はどれがよいか」というテーマでディベートをしました。先生方が専門の知識を活かし、大真面目にそれぞれのお菓子の長所をスピーチしてくださってとても面白かったんです。単純なテーマに、意外なほどたくさんのアプローチがある。どれも説得力がある。子どもたちはずいぶん触発されたと思います。

平和学習の一環として俳句づくりも行いました。広島へ宿泊体験学習に行くことが決まっていたので、事前学習として戦争に関係のある文献をたくさん紹介しました。とにかく読む、そして書かれている文章から五音・七音をランダムに抜き出して俳句にする課題を出しました。すると、子どもたちは必死に多くの戦争の本や図鑑を読むんですよね。そして、本当に真に迫る胸が張り裂けるような句がいくつも誕生しました。

RITS共和国のお菓子について真剣にディベートする先生たち。

RITS共和国のお菓子について
真剣にディベートする先生たち。

はっきり考えを述べることが
平和への第一歩

私は世界を平和にしたいと思って教師を続けています。そんなことを話すと笑われることもありますが、私が教えた子どもたちが、将来世界平和のために力を尽くしてくれれば、きっと世界は変わる。そのために戦争について、平和について、民主主義について教え続けています。平和を築く礎になるものは、対話です。権力者の言いなりにならず、自分の意見を述べること。相手の言うことが間違っていると思ったら「それは違うと思う」と言えること。互いに自分の考えを受け止め、相手の立場にたつこと。誰もが暴力ではなく話し合いを尊重できれば、世界は平和になるはずだと確信しています。しかし、世界情勢を見るとひとりの人間として無力感に苛まれます。けれど子どもたちとの学習を通じて、考えること、傾聴すること、意見を言えることを私自身も自分の中に育てながら、将来平和に貢献できるように子どもたちの成長を手助けできればと思っています。

児童が作った俳句

児童が作った俳句

吉永先生の授業って、どんなの?

Q 劇団の俳優さんを招いて詩を読む
ワークショップはどうでしたか?

吹き出し

Q 吉永先生の授業はどんな感じですか?

吹き出し

Q 授業では普段から音読をよくしますか?

吹き出し

Q ディベートはどうですか?

吹き出し

授業の様子

※本内容は子育てフリーマガジン「クルールきょうと版2023年1・2月号」に掲載された内容です。教員情報および取材内容は掲載当時のものです。