立命館小学校

本気のなぜ?が学ぶ意欲を突き動かす!

立命館小学校には、放課後の課外活動のひとつに児童一人ひとりが自分で決めたテーマで自由に研究する「立命館小学校アントレプレナーシッププログラム」(RIMIX※と連携実施)があります。有志で集まった6年生15名がそれぞれの方法で調べたり、作ったり、試したりしていますが、「自由な研究」と聞くと「夏休みの?」と聞き返したくなりますね。実際はどんなふうに活動しているのか、目的は何なのか。指導にあたっている正頭英和先生にお話を聞きました。
※RIMIX Ritsumeikan Impact-Makers Inter X (Cross) Platform(立命館・社会起業家支援プラットフォーム)の略。

立命館小学校 主幹教諭
正頭英和 先生
2019年には教育界のノーベル賞といわれる「グローバル・ティーチャー賞」トップ10にノミネート。立命館小学校だけでなく教育界全体の先進的な試みを牽引し続けています!

授業イラスト

行動へのモチベーションと
好奇心
喚起するのは「体験」

行動する気を起こすためにはモチベーションが要ります。でも、とくに不自由なく生活でき、生き方にも無数の選択肢がある現代は、何かに向かって「頑張ろう」という気持ちを高揚させるのが難しい。そんな中、好奇心をかきたて、知るために行動しようとする、そのトリガーになるのは体験なんです。多様な体験をたくさん積むことがその後の興味関心につながる。毎年、有志で集まった児童に、取り組んでみたいテーマを4月初めに尋ねますが、ほとんどの児童が答えられません。その時点でテーマを言える子に理由を尋ねると、前にこれこれこういうことがあって面白かったから、という答えが返ってきます。つまり基本的に、子どもたちの興味関心は過去の体験に紐づくんです。多様な体験を多く積んでいればいるほど、好奇心は強くなり、行動へのモチベーションに富むといえます。

授業写真

東京の宇宙ベンチャーiSpaceさんを訪問して
ワークショップに参加している様子

「調べたい」「作りたい」
「試したい」

ですから「立命館小学校アントレプレナーシッププログラム」では、参加メンバーにまずいろいろな体験の機会を提供します。各界の専門家の授業や、芸術家によるワークショップもあるし、こちらから訪問し見学する機会もあります。秋までそうした体験を重ねたうえで、10月頃もう一度何にチャレンジしてみたいかを聞くと、今度はテーマが出てきます。インプットされたいくつかの体験が好奇心をくすぐり、もっと知りたいという欲求につながるのです。
子どもたちの研究テーマを見渡すと、「調べたい」「作りたい」「試したい」の三つに分類できます。これまで大人は「頑張れ」「努力しろ」と観念的なことしか言わなかった。もう一歩子どもに近づいて、「じゃあ調べてみようか」「一緒に作ってみようか」「いっちょ試してみるか」という声かけに変えれば、子どもは具体的なアクションを起こせるのではないでしょうか。

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立命館大学を訪問して3Dプリンターや
レーザーカッターでものづくり

コミュニティの貴重さ

楽しいかどうかというのは極めて主観的なことです。従来、自分を客観視できることが良しとされ、他者による客観的評価が重視されてきましたが、私たちはもっと主観を大事にすべきではないでしょうか。もっと、人の視線に振り回されずに自分の好きなことに没頭していい。なぜそれができないかというと、子どもの場合は学校の教室と家庭、大人は職場と家庭しか属するコミュニティがないからです。それらの場所でつまずくともはや居場所がなくなる。もう一つ、あるいはいくつでもいい、属するコミュニティを拡げることがとても貴重なんです。何を好きだと言っても、どんなことをやりたいと言っても、誰も否定しないで受け入れる交流の場であること。本プログラムはそういうコミュニティです。

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立命館大学にて、大学生に混じりながら
プロジェクトの途中報告会

「この世は生きるに値する」

RIМIXは立命館学園全体の事業で、起業マインドの育成や社会起業家の支援という理念がありますが、ここ立命館小学校の放課後活動として行う「立命館小学校アントレプレナーシッププログラム」の目的は、とにかく楽しんでほしいということに尽きます。世の中には解明されていないことがまだまだあるし、知ればもっと楽しいことがいくらでもある、だから楽しもうよ、と。「この世は生きるに値する」のです。これはジブリを創立した映画監督、宮崎駿さんの言葉です。これこそ本プログラムの精神といえます。世の中を楽しめる術を身に付けよう、と子どもたちに言い続けます。

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プロジェクト報告会後、
立命館総長の仲谷先生と一緒に

先生インタビュー:夢を叶えるために生きる力を身につけよう!

「先生を味方に」

君たちはこれから中学、高校、大学と進んでいくけれど、基本的に先生を選べません。自分にとって相性のいい先生にあたるとは限らない。ならばこちらから積極的に、目の前にいるその先生を味方にしよう。先生というのはあるジャンルの専門家なんだから、君たちが目的意識をもってその先生の知識を引き出すように働きかける、味方につけるんです。ここは、そのためのトレーニングの場だと思ってください。

「本物と出会う」

たとえば君たちがプロ野球選手になりたいと思って、誰かにアドバイスを求めるとします。誰に聞きますか? 進路指導の先生? 野球部の監督? 正解はプロ野球選手です。プロ野球選手になれなかった人、なろうとも思わなかった人にアドバイスを求めても「なれるわけないやん」と返ってくる可能性が高いです。でも実際になれた人に尋ねたら、その人自身がどんなふうにしてその夢を実現したのかを具体的に話してくれる。君たちが将来やりたいと思ったこと、なりたいと思う職業を見つけた時、本物に会いに行ってください。

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※本内容は子育てフリーマガジン「クルールきょうと版2023年3・4月号」に掲載された内容です。教員情報および取材内容は掲載当時のものです。