立命館小学校

歌うって、演奏するってこんなに楽しい!

大きく口を開けて歌う、リコーダーや鍵盤ハーモニカを吹く。小学校の現場では当たり前にあったそんな音楽の授業がまったくできなかったコロナ禍。しかしながら今、ようやく通常に戻りつつある学校で、立命館小学校ならではの取り組み、工夫に満ちた授業が行われています。裏谷先生が担当する5年生の音楽の授業と1年生・6年生合同授業を取材しました。

立命館小学校 教諭
裏谷順子 先生
開校前の準備段階から今日まで立命館小学校で教員として奮闘。コロナ禍では音楽教師ネットワークを駆使して他校の先生がたとアイデア交換もされたとか。

授業イラスト

八方ふさがりのコロナ禍が
大きな転機にもなった

「コロナ禍で、音楽科は本当に何もできなくなり困り果てましたね。飛沫を飛ばしてはいけないので歌えない、吹けない。日常的にやっていたことのほとんどができなくなりました。声を出さず、接触せずにできることを模索する日々。立命館小学校では、従来から日本文化を学ぶ一環として、お箏や日本舞踊をカリキュラムに取り入れていますが、お箏を例年よりも長いスパンで学習したりしました。おかげでその学年の子たちはお箏名人になりましたね。また、『CUPS』のような新しい教材も創りました。カップ一つでリズム遊びを楽しむことができる、まさにコロナ禍の救世主。グループでリズムを考えたりダンスを加えたり、オリジナルの曲を創ることを楽しみました。」

立命館小学校 教諭 裏谷 順子 先生

自主的に学び
表現する喜びに目覚めてほしい

「とはいえ、そのコロナ禍でわかったことは、子どもたちには自主的に学ぶ力があるということです。教師は手助けをすればいい、子どもの学び次第で手助けをさじ加減すればいいということ。英語科で行っているアイランド・ラーニングを見た時に、音楽科でもやってみたいと思いました。必要なところで『個』に関わって、的確なアドバイスを入れる。学びの主体性が発揮されるように、場の設定の仕方に工夫をして、入念に準備をしていますが、この形に慣れると、子どもたちはどんどん自分たちで学びを進めていきます。多少音を外したっていい。表現する喜びを感じてほしい。音楽は何よりも楽しむものですから」と裏谷先生は微笑みます。

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課題をローテーションする
アイランド・ラーニング

そんな5年生の音楽の授業。クラス全体を6つの小グループに分けて、2グループずつ、「歌」「リコーダー」「ソルフェージュ」の学習をします。音楽室内ではリコーダーの練習とソルフェージュの自習。廊下に出て少し離れた場所に歌の練習をするエリアがつくられていました。「歌」グループはそれぞれモニターの前に立ち、子どもたちで操作をして音源を鳴らし、練習を始めます。毎回リーダーがその日のめあてにそって練習を進めます。1学期の探究のテーマは「平和」。曲は『地球星歌』を選びました。

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音楽室内では「リコーダー」グループが2人1組で『星笛』を練習しています。1曲吹き終わるごとに、「ありがとう」と伝えあった後、一緒に吹く相手を変えてまた練習。先生によると、相手も座る場所も毎回替わるので、飽きずに何度も練習することができるとのこと。
音楽室の端の丸テーブルを囲み、残りの2グループはタブレットを用いてソルフェージュの自主学習。ソルフェージュとは音符の読みかた学習のこと。このデジタル教材も英語科教員が作成したものを、音楽バージョンにしたものです。間違えている箇所があると先に進めないようになっているため、子どもたち同士で「わかる?」「大丈夫?」と教え合いながら自分たちで学習を進めることができます。
時間がきたら2グループごとにローテーションをして、課題をチェンジ。裏谷先生はどのグループにもたえず目を配りながら、こどもたちは45分の授業の中で自主的に3つの課題をこなします。これをアイランド・ラーニングというのだそうです。こうした学びの中で、自然と励ましの声かけや友だちを見守る姿勢が生まれていました。

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取り組みレポート:教科の枠を超える!探求的な合同授業とは?

1年生を楽しませるために
〜教科横断型の取り組み〜

場所は体育館。1年生と6年生から1クラスずつ、60人が集まって交流します。司会進行役の児童によれば「合同授業も4回目。ずいぶん仲良くなれましたね!」とのことでした。
立命館小学校では、入学した1年生には6年生がひとり「パートナー」となり、学校生活における先輩として、案内役を務めます。1年生から見れば6年生は大きくて大人のような存在ですが、先生よりも「近い」この「パートナー」の存在は、心強いに違いありません。その「パートナー」と、北海道での宿泊学習の話をしたり、音読を一緒にしたり、親密な様子が見られました。
最後のダンスは、6年生が覚えて1年生に教える形で練習してきたそうです。途中には1年生が創作したかわいらしいパートもありました。「教えることは自分がやる以上に難しかった。教えることで自分のダンスも上手になっていくのがわかった」という6年生の声や、「6年生と一緒で楽しかった!」という1年生の感想も。ダンスという自主的な活動を通して、学年を超えたつながりが生まれるプロジェクト。盛りだくさんの内容でした。

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自主的に学ぶ
力を身につける

音楽の授業のアイランド・ラーニングにおいては、先生は全ての指示を出すのではなく、見回りながら助言を行うことに重きを置いていました。1年生と6年生の合同授業は、ほとんどが6年生の企画運営によるものでした。際立つのは児童らの自主性です。「子どもの自主性に任せる」というのは、聞こえはいいですが、たやすいことではありません。「自主的に学ぶ力をつける」ために、子どもの姿を思い浮かべながら計画を立て、入念に準備することが必要とのことでした。開校から今日まで、そのチャレンジを積み重ねた立命館小学校の”今”が垣間見えました。

※本内容は子育てフリーマガジン「クルールきょうと版2023年9・10月号」に掲載された内容です。教員情報および取材内容は掲載当時のものです。