立命館小学校

調べて学ぶ楽しく学ぶめざせ探求マインド

「探究」をキーワードに、「自ら学ぼうとする力」を育む教育にいっそう力を入れている立命館小学校。今回、1・2年生で実施している生活科の授業を取材しました。生活科は、3年生から始まる理科と社会科につながる教科として、1992年度学習指導要領から設置されています。すっかりおなじみになった教科名ながら、授業内容は学校によってさまざまなのでは? 立命館小学校の1・2年生の生活科ではどんなことが行われているのでしょうか。担当の先生お二人にお話を聞きました。

立命館小学校 教諭
永井 健太 先生
14年間の公立小学校勤務を経て、今年度から立命館小学校勤務の永井先生は、人生で2度目の1年生の担任。小学校3年生と1年生、ふたりのお子さんのパパ。「仕事と子育てがオーバーラップして楽しくて仕方ありません」

 

立命館小学校 教諭
山田 航大 先生
3年間公立小に勤務したのち立命館小学校に来て6年目の山田先生。3年続けて2年生を担任、今は学年主任も務めます。家庭では3歳と1歳のパパ。「去年、1か月の育児休暇を取りましたが、私自身の意識改革の機会でした!」

授業イラスト

1年生
秋を見つけ、拾ったどんぐり
自分で名前をつけてみた!

*1年生の生活科の授業を見学させていただき、ありがとうございました。みなさん、真剣かつとても楽しそうに「どんぐり」に触れていますね。
永井先生*先日、どんぐりを拾いに宝が池公園まで出かけました。その前段階として、「秋になると見えてくるものは何だろう」と子どもたちに問いかけると、答えの中に「どんぐり」があったんですね。それで、どんぐりについて知っていること、疑問に思うことを話し合いで交流すると、どんぐり探しに行きたいという希望が出てきました。どこへ行けば拾えるのか、どんな準備が必要か、なども授業で話し合ったんです。

授業の様子

*子どもたちが自ら提案したアイデアや方法を実践していくのですね。
永井先生*本校では現在「探究する」ことが全校的なテーマとなっていますが、生活科での学びはこの「探究する」によく合致するんです。話し合い、体験し、表現する過程で児童はいろいろなことを思い、考え、調べていきます。教師が与えるのではなく、自分たちで問いも答えも見つけていく。すべて探究の基本です。

授業の様子

*自分で拾ってきたどんぐりについて、誇らしげに語ってくれる子もいました。また、よく観察もしていますね。
永井先生*そのどんぐりにふさわしい名前、そして理由も書くように助言すると、一生懸命見たり触ったり、振って音を聴いたりします。知ろうとする意欲が高まります。

*そのほかの生活科での学習や授業について教えていただけますか。
永井先生*1学期に「お家の人に小学校を案内する」という参観を兼ねた授業を行いました。1年生にとって入学は、それまでとは全く異なる集団社会へのデビューであるといえます。教員はもちろん、異学年児童、立命館の中高大学生、留学生とのふれあいが待っています。そうした新たな社会のつながりを大切にして学んでいく基礎をつくる上でも、生活科での学びが有効だと思っています。

自分の言葉で書き込まれたオリジナルの「どんぐり図鑑」

どんぐりの並べ方や種類、個数で、1人ずつまったく違う作品に

自分の言葉で書き込まれたオリジナルの「どんぐり図鑑」

自分の言葉で書き込まれたオリジナルの「どんぐり図鑑」

立命館ネットワークで生活科から社会へとつながる

2年生
自分で育てたミニトマト
食べて比べて、ケチャップにも?

山田先生*1学期に2年生の生活科では、野菜づくりに取り組みました。昨年度の2年生は自分で栽培したい野菜を選んで育てましたが今年は、育てる品目をミニトマトに統一して、より深く知ろうというねらいを持ちました。従来本校と連携している企業の、種苗会社や食品会社の方に来校いただいて教わる機会も設けました。ミニトマトにも種類がたくさんあり、味も違います。実際、自分が育てて収穫したものからつくったケチャップとお店のケチャップを食べ比べてみたり。またトマトを原料に、ケチャップをはじめ多様な加工食品がつくられるということも知る機会になりました。

授業写真

また野菜の栽培は、いわば農作物のことですから、気候に左右されます。頑張ってお世話をしてもうまく育たないこともありますよね。そういう時に企業や専門家の力を借りることができるのが本校の強みですね。なぜうまく実らなかったのか、児童は原因が知りたい。専門家に尋ねて解決策が見えると、より具体的な方法がわかり、次に生かすことができます。
永井先生*どんぐりについては、京都府立植物園内にある「きょうと生物多様性センター」からどんぐり博士のような方に来ていただいて、児童の質問に答えてもらう機会をつくりました。立命館小学校として広げてきたネットワークは非常に有効ですね。教員にとっては心強いことですし、教員自身も勉強になって、次に生かせます。
山田先生*そういうふうに外部の専門家、先生方と接触する機会は、のちに社会科で体験する見学や校外学習にも生きてきます。また2年生で言えば、町で野菜や食品を見る自分の目が変わるのを自覚すると思いますが、こうしたことも社会科の授業へとつながっていくと思います。学びのフィールドを教室だけにとどめず、ダイナミックな探究学習を進めていくことを目指しています。そのために、開校以来培ってきた多種多様な企業や団体、専門家とのつながりを生かしていますし、お相手の方にも小学校とのつながりがプラスに生きると良いなと思っています。

授業写真

さきほど教員も学ぶという話が出ましたが、立命館小学校ではいろんなことにチャレンジしようとする教員がたくさんいます。教員はみな、自分の教科はもちろん受け持ちのクラスや学年において何かしら目標を持ち、トライし続けています。

授業写真

永井先生*新しいことに取り組みやすいという土壌がありますね。自分たちもそうですから、児童が「○○やりたい」と言った時にけっして「ダメだ」とは言いません。いいよ、やってみよう、どうすればいいかな、まず考えようか……と、探究へと促していくんです。
*生活科を通して、立命館小学校の探究学習の特色を感じられる取材でした。今日はありがとうございました。

※本内容は子育てフリーマガジン「クルールきょうと版2024年1・2月号」に掲載された内容です。教員情報および取材内容は掲載当時のものです。